イレクターパイプで車中泊ベッドを作るなら、最初に決めたいのは車内に収まる寸法と、使わないときの置き方です。接着して形を固定する方法も、メタルジョイントで分解できる構造にする方法もあります。普段の荷室と寝る場所を兼用したい場合には、ラックを並べ替える公式製作例も参考になります。
イレクターは、スチールパイプにプラスチックをコーティングしたDIY素材です。ただし、パイプの種類だけでベッドの強度は決まりません。ここでは矢崎化工の公式レシピを土台に、実車に合わせた設計から加工、組み立て、天板作りまでを順に説明します。寸法を変更する場合も、構造や荷重の条件を含めて検討しましょう。
- 実車の寸法と日常時の配置から考える設計
- 分解・並べ替えの違いに合わせたジョイント選び
- 天板と荷重条件まで含めた強度の検討
- 切断・接着・天板作りの具体的な手順
イレクターパイプの車中泊ベッドは寸法・構造・材料費から設計する
車内寸法と普段の使い方を決め、公式図面を実車に合わせる

まずはベッドを使う状態にシートを配置し、設置場所のサイズを確認します。メーカーの設計手順は、使用用途を決める、使う場所のサイズを確認する、イメージ図を描く、寸法と部品を決める、パイプ寸法を計算する、という順序です。完成サイズを先に決め、そこから部材の長さへ落とし込みます。
| 公式製作例 | 寸法の表示 | 構造・使い方の特徴 |
|---|---|---|
| ヴォクシー例 | 大:幅101×奥行60×高さ54cm、小:幅76×奥行60×高さ54cm | 大小2台を製作。車内の勾配に合わせた脚の高さとアジャスターを採用 |
| エブリイ例・荷室ラック時 | 幅120×奥行82×高さ27cm | 普段は荷室ラックとして使用 |
| エブリイ例・ベッド時 | 幅60×奥行164×高さ27cm | 助手席と2列目シートを倒し、ラックを縦に並べる |
ヴォクシー例の参考車両は、2009年式のトヨタ ヴォクシー DBA-ZRR70Wです。左右の側面フレームは、車の傾斜に対して平らになるよう高さを変えています。図面にも、幅・高さのパイプは取付車種や取付位置によって変わるため、必ず実車に合わせて検討するよう注意があります。
同じ車名でも、図面の寸法をそのまま適合寸法とは扱えません。
普段も荷物を載せるなら、エブリイ例のような並べ替え式が検討の入口になります。一方、勾配に合わせて寝る面を作りたいなら、ヴォクシー例の脚の設計が参考になります。まず選ぶのは完成写真の見た目より、日常時と車中泊時の配置。自分の車のシート配置と設置位置を、手書き図面に添えておきましょう。
分解したいならメタルジョイント、接着式は完成後の扱いまで決める
ベッドの骨組みを小さく分解して保管したいなら、ボルトとナットで締め付けるメタルジョイントを検討します。メーカーは、組み立て後の分解・再利用が可能と案内しています。プラスチックジョイントは接着液で固定する方式で、十分に接着して乾燥したものは外れず、剥離剤もありません。
| 比較点 | プラスチックジョイント | メタルジョイント |
|---|---|---|
| 固定方法 | 専用接着液を注入して固定 | ボルト・ナットで締め付けて固定 |
| 完成後の分解 | 接着・乾燥後は外れない | 分解・再利用が可能 |
| 組み立てで重視する点 | 向き、差し込み、接着状態 | ツメのかみ合わせ、締め付け状態 |
ここで区別したいのが、「フレームを分解すること」と「完成したフレームを並べ替えること」です。エブリイの公式例は、ラックを縦に並べてベッドへ切り替える方式。毎回ジョイントを外して組み直す手順ではありません。普段の収納方法を考えるときも、どちらの使い方を求めているかを先に決めます。
また、接続部品と天板を取り付ける部品は役割が異なります。ヴォクシー例では板受けのJ-113Aへネジ留めして板を取り付け、エブリイ例では片サドルAを材料に含めています。パイプ同士をつなぐジョイントだけを数えず、板の固定方法まで図面に書き込んでおきましょう。
耐荷重はパイプ径だけで決めず、構造と荷重条件を確認する

「何kgまで寝られるか」に、すべての自作ベッドへ共通する数値は示せません。メーカーは、組み立てたものの強度が構造、サイズ、ジョイントの種類、接着の状態などに左右されると説明しています。掲載されている強度も目安となる参考値で、用途、環境、荷重のかかり方によって変わります。
公式の「梁の強度」は、常温で梁の中央に荷重が集中する条件です。「棚の強度」は、常温で板をフレームの4辺に載せ、長辺・短辺のパイプへ平均して荷重がかかる条件で、板の強度は含まれません。棚の数値だけを読み、同じ重さの人が寝られると判断すると、天板や荷重条件の検討が抜けてしまいます。
荷重にも違いがあります。メーカーは、静置している状態を静荷重、積み降ろしや振動などの荷重が繰り返しかかる状態を動荷重、衝突や落下などの衝撃が加わる状態を衝撃荷重と区別しています。完成寸法だけでなく、どこで支え、どのように荷重がかかる構造なのかまで、図面と合わせて考える必要があります。
メーカーの一般的な使用上の注意には、人の体重を支える製作物として手すり・ブランコ・ぶらさがり器・ハシゴ・工事用足場などを製作しないよう警告があります。一方で車中泊ベッドの公式レシピも公開されています。
公式例の存在を、任意の寸法・構造での安全保証へ広げず、変更する設計の強度はメーカーのお客さま相談室へ相談してください。他社類似品との組み合わせも、メーカーは避けるよう案内しています。
材料費はフレームと天板・クッション・工具を分けて見積もる
公式レシピの概算材料費は、ベッド全体の購入総額として読むのではなく、表示された対象を確認します。エブリイ例は24,600円で、「イレクター部材のみ」という条件です。PDFにも同額が載り、価格は税込・予告なく変更される場合があるとの脚注と、2023年4月の表記があります。
現在の見積もりは、必要部材の販売価格で取り直します。
ヴォクシー例は表示が一致していません。紹介ページは19,500円、公式PDFは32,460円で、どちらもイレクター部材のみ。PDFには税込価格についての変更注意と2025年1月の表記がありますが、この差の理由は明記されていません。
どちらかを現在の確定費用とせず、購入時の部材見積もりで確認するのが確実です。
| 見積もりの区分 | 公式例にある材料・道具 | 数量を決める基準 |
|---|---|---|
| 骨組み | Φ28イレクターパイプ、接続ジョイント、アジャスター | 採用する図面の長さ・本数・型番 |
| 板の取付部品 | J-113A、片サドルAなど | 採用する板の固定方式 |
| 天板 | ベニヤ板など | 完成サイズと製作例の板条件 |
| 寝る面 | ウレタン、合皮、またはマット・シュラフ | 自作マットを作るか、載せる方式か |
| 作業用 | 接着液、メタルレンチ、切断工具、タッカーなど | 接続方式と加工する範囲 |
材料表では、個数と包装単位も分けて読みます。エブリイ例の片サドルA(EF-1008A)は「3」と表示されていますが、4個入りが3つ、合計12個必要という注記があります。板も818×600×9mmを2枚用意する指定です。数量欄だけを写さず、すぐ下の注記まで含めて買い物リストに移してください。
イレクターパイプで車中泊ベッドを作る手順と組み立ての注意
完成寸法・芯寸法・パイプの切断長を区別する
図面に書かれた数字が、そのまま切断する長さとは限りません。エブリイの公式PDFには、図面記載のサイズは芯寸法、単位はmmとあります。一方、「H-」から始まる表示はΦ28イレクターパイプの長さです。たとえば図中の530という寸法と、部材名のH-460は別の表示。
外寸、芯寸法、部材の長さを分けて読みます。
ジョイントが変われば、外寸から求めるパイプ長も変わります。メーカーのΦ28プラスチックジョイントJ-4の計算案内では、外寸から「ジョイント端からパイプの芯まで17mm」と「芯からパイプ先端まで20mm」を、それぞれ両端分差し引きます。
部材を変更したときは、元の図面のパイプ長をそのまま流用しないことが大切です。
計算例:メーカーのJ-4用計算案内と同じ組み合わせで、外寸を仮に1,000mmとした場合、パイプ長は1,000−17×2−20×2=926mmです。この仮定での長さの計算であり、車中泊ベッドの推奨寸法や耐荷重を示す値ではありません。
Φ28メタルジョイントHJ-1の計算案内には、J-4とは異なる寸法と、パイプインナーキャップJ-110Aに関する寸法が示されています。選んだジョイントに対応する計算案内を使い、キャップも含めて部材を確定します。
パイプには規格サイズ販売とカット販売があるため、自分で切断するかどうかも、この段階で決められます。
パイプを切断し、バリ取りと切り口の処理を行う

自分でΦ28パイプを切る場合の工具候補は、矢崎化工の「イレクター Φ28・32用 ハンドカッター EK-9」です。対応対象はΦ28・Φ32イレクターパイプで、公式部品ページと販売ページの説明が一致しています。
金切りノコでも切れますが、メーカーは専用ハンドカッターなら垂直にまっすぐ切れると案内しています。
- パイプの寸法を測り、切断位置にペンで印を付けます。
- 印にカッターの刃を合わせ、ハンドカッターを2〜3回転させたら、ノブを締めて刃を食い込ませます。
- 切断後は、外側・内側にできたバリをヤスリなどで必ず削ります。
刃を必要以上に強く食い込ませると、ハンドルが回転しづらくなります。また、メーカーはパイプを万力などで固定することを勧めています。端から15mm以下はハンドカッターを正しくセットできず切れないため、長さを決める段階でこの制約も考慮します。詳しい扱いは、購入時に同封される取扱説明書に従ってください。
切り口の内側へ指を入れたり、手のひらで押さえて回転させたりしないでください。残ったバリは切傷の原因になり、インナーキャップが入らなくなる場合もあります。メタルジョイントで組む通常のパイプは、防錆のため切り口にJ-110Aをはめ、接着液で接着する案内です。
メタリックパイプはJ-110を接着なしではめる指定なので、同じ処理としてまとめないようにします。
面ごとに組み立て、接着と締め付けを仕上げる
組み立ては、いきなり立体全体をつなぐより、左右などの「面」を先に作り、その面同士をパイプでつなぐのがメーカーのコツです。ヴォクシー例も、左右の側面フレームと上面を作ってから組み合わせる順序。左右で高さが異なる設計なので、脚のパイプ長とジョイントの向きを、図面と照らして作業します。
接着前は、パイプとジョイントのほこり・水・油などを拭き取ります。パイプをジョイントの奥まで差し込み、ねじれや傾きがない状態にしてから、接着液を1〜2滴注入して仮接着。間違いがないことを確認し、本接着へ進みます。
接着には必ずイレクター専用のサンアロー接着液を使い、製作物の向きを変えながら、できるだけ上から注入します。
接着液は接着面へ均一に、あふれないよう丁寧に注入します。1回だけでは不十分な場合があるため、最後に接着箇所全体を見直してください。あふれた液は他との接触に注意し、拭き取らず自然乾燥させます。注入直後は15分動かさず、完成後は接着強度を得るため24時間以上静置してから使用する指定です。
接着液は有機溶剤を含み、引火性があります。メーカーは接着作業を室内で行わないよう案内しています。やむを得ず室内で行う場合は、十分に換気し、臭いのない状態を継続して安全を確認する条件です。火気のある場所での使用や作業場での喫煙を避け、プラスチック類・塗装面への付着にも注意してください。
メタルジョイントは、ツメ同士をしっかりかみ合わせてパイプを挟み、メタルレンチでボルト・ナットを締め付けます。かみ合っていない状態で締めると、変形・破損のおそれがあります。最後は全締め付け箇所に緩みがないか確認します。接着式と締め付け式では、仕上げで点検する部分も異なります。
天板とクッションを作り、設置後のがたつきを調整する

天板の厚さは、製作例の条件として読みます。ヴォクシー例はベニヤ板が1010×590×12mmと760×590×12mmを各1枚。エブリイ例は818×600×9mmを2枚です。異なる構造のレシピなので、この違いだけから「薄い方でもどのベッドに使える」とは判断できません。
天板も含めて、採用する図面に沿って検討します。
ヴォクシー例の自作マットには、板と同じ縦横サイズの硬質ウレタンフォームチップクッション30mm厚、高弾性ウレタンスポンジ15mm厚、合皮を使います。フレームだけで完成サイズを決めず、板とクッションを載せた状態まで考えて材料をそろえます。メーカーのマット製作案内は、次の流れです。
- 車に合わせたサイズでベニヤ板を切り、2種類のウレタンも板に合わせて切ります。
- 合皮は板・マットの厚みと、片側5cmずつの余裕を見込んで切ります。
- 合皮を裏返し、高弾性ウレタンスポンジ、硬質ウレタン、板の順に重ねます。
- 四隅を引っ張ってタッカーで固定し、直線部分も約3cmの間隔を空けて留めます。
- 余分な合皮を切って仕上げます。
ヴォクシー例では、大きい方のベッド1台の4か所に板受けのJ-113Aをはめ、板をネジ留めします。床に板を敷いてフレームをひっくり返すと、取り付け作業がしやすいという案内です。図面に従って小さい方も同じ手順で製作し、材料表のJ-113Aは大小2台で合計8個です。
完成した大小2台を、座席を折り畳んだ車内に設置し、ベッドががたつく場合はアジャスターで調整します。脚の設計と設置後の微調整を、ひと続きの作業として進めます。
自作の張り込みマットを作らず、エブリイ例のようにマットとシュラフをセットする仕上げ方もあります。どちらを選ぶ場合も、イレクターの使用温度範囲は−10〜50℃で、その範囲を超える場所や火のそばでは使用しない指定です。

寸法、接続状態、天板の取付条件をそろえ、接着を行った部分がある場合は指定の静置時間を確保してから使用しましょう。
イレクターパイプで作る車中泊ベッドのまとめ
この記事のまとめです。
- 公式図面は製作例として使い、幅・高さや設置位置は実車に合わせて検討する
- 普段の荷室と寝床を兼用するなら、完成したラックを並べ替える方式も候補になる
- メタルジョイントは分解・再利用が可能で、接着したプラスチックジョイントは乾燥後に外れない
- 耐荷重は構造・サイズ・接続状態・荷重条件で変わり、棚の強度には板の強度が含まれない
- 人の体重を支える製作物への警告を踏まえ、公式例から変更する設計の強度はメーカーへ相談する
- 概算材料費はイレクター部材のみの表示で、ヴォクシー例は紹介ページとPDFに価格差がある
- 購入リストは天板・クッション・工具も含め、部品の個数と包装単位を区別する
- 外寸・芯寸法・切断長を分け、使うジョイントに対応したパイプ長を求める
- 切断後はバリを必ず削り、メタルジョイント用の切り口処理はパイプの種類に合わせる
- 接着は専用液で行い、作業場所と火気に注意する。完成後は24時間以上静置してから使用する
- 天板とクッションは採用する製作例の条件に沿って用意し、設置後のがたつきはアジャスターで調整する
参考にした情報
- 車中泊ベッド(ヴォクシー)|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- 車中泊ベッド(エブリイ)|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- イレクターの強度は? 梁(はり)|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- イレクターの強度は? 棚|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- 長さのはかり方は? Φ28プラスチックジョイント(J-4)の場合|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- 長さのはかり方は? Φ28メタルジョイント(HJ-1)の場合|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- イレクター組立ストーリー 組み立てよう|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- アイデアをカタチにするジョイント|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- 8976897b0a506aa52c46054b497198aa.pdf
- 040015_zumen.pdf
- 車中泊ベッド用のマットを作ろう!|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
- 部品を探す 純正部品(ハンドカツター EK-9)|Diy-Life – イレクターで、できるワクワクを。
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